座談会Special Contents

ROUND-TABLE DISCUSSION

医療統計学教室って
どんなところ?
在籍スタッフの本音を
座談会形式で話しました。

  • 特任准教授

    吉田 寿子

  • 特任講師

    今井 匠

  • 特任助教

    加葉田 大志朗

  • 特任研究員

    谷内 颯樹

  • 特任研究員

    相田 麗

  • 特任研究員

    河合 稜太

そもそも医療統計学とは?

医学に関わる研究においてエビデンスを示すためには、様々な情報を考慮した上で結果の妥当性や再現性などを示す必要があり、医療統計学はそれらの側面等に貢献しています。
これから研究を始めたいという方が相談に来られることもあれば、論文を学術誌に投稿したあとに査読者から「この部分は統計家に相談して直してください」などと言われて相談に来られることもあります。

今井

これから研究を始める方には、統計解析だけでなく、どんなデータをどうやって集めるか、そもそも研究デザインが適切かどうかなども含め、臨床研究の全体像を見据えて相談を進めています。

加葉田

たとえば臨床のドクターが、ある薬に対してどの程度の効果があるのか?どんな人により効果を発揮するのか?などというクリニカルクエスチョンをもったとします。その疑問を解消するために、リサーチクエスチョンを明確にして研究を構造化する必要があります。この時、どのような目的をもってどのような研究をすべきか、リサーチクエスチョンを一緒に考えていくこともあります。

吉田

統計学はビジネスなど身近な業界でも活用されていますが、臨床研究においては人が相手になります。そのため医療統計学分野では、統計学だけでなく、疫学や法規制などさまざまな知識が必要になります。たとえばデータ収集に患者さんが来られなくなる欠測の問題や個人情報保護への配慮、倫理上の観点など、医療分野ならではの課題もあります。

相田

だからこそ、我々の存在意義があります。医療のエビデンスを支えるプロとして、私たちは医療分野ならではのデータ収集・解析の課題も念頭において相談に乗るように心がけています。

吉田

医療統計学の今後の可能性は?

医療統計学の特徴や意義は多々ありますが、それをもっと医療従事者の方々に知ってほしいというのは、ここにいる全員の想いです。臨床研究をする方々にもっと気軽に相談に来てほしいと思っています。

谷内

医療統計学の認知度が上がり、医療従事者の方たちの研究が進めば、ひいては医療分野全体の貢献にもなる。教授の新谷先生がよく言っているのですが、臨床で働く医療従事者に研究マインドをもってもらえる環境をつくるのも我々の一つの使命です。

今井

ニーズはかなりあると確信しています。実際に新谷先生の講演後は相談依頼が一気に増えます(笑)。わかりやすく、人を惹きつける話し方で、医療統計学についての理解が深まりますので、新谷先生の講演をきっかけに、医療統計を勉強し始めたとか、臨床研究をやってみようという気になったという研究者も多いです。多くの研究者に先生の講演を聞いてほしいと思います。

吉田

新谷先生は医療従事者向けの本なども出版されているので、医療現場でもご存じの方は多いのではないでしょうか。「臨床研究を応援してくれる統計家」として、知名度はあると思います。

今井

そのニーズに応えるための医療統計学の専門家の育成も大きなテーマだと思っています。日本では情報科学を専門とされる方は沢山いても、臨床研究を支援できる統計家の数はまだまだ足りません。私たちの研究室も将来的にはもっと大きくなっている可能性もあるかもしれませんね。

加葉田

僕は学部は理学部数学科でしたが、もともと医学分野に興味があって、自分の知識を医学に活かしたいとこちらの修士課程に進学しました。修了後はそのままここで研究員として働いています。

河合

統計学を学んだ人は、製薬会社など民間企業に就職する人も多いのですが、携わる臨床研究の数が多くその種類も幅広いのがアカデミアの魅力だと思っています。私の経験上、本当に様々な研究課題に触れることができるので、自身の経験や世界観を広げるという意味でも、アカデミアで働くことは良い選択肢のひとつなのではないかと思っています。

加葉田

教室の文化・風土について

この教室は本当に自由な雰囲気で、チームワークも抜群。これは新谷先生の人柄によるものだと思います。おおらかで、人間関係もとってもフラット。海外暮らしが長いこともあるのか、考え方や発想も決まった枠にとらわれず、いつもいい意味で驚かされています(笑)

吉田

教授室のドアはいつも開いていて、誰でも自由に出入りできる共有スペースのようになっています。あと教授のカレンダーも自由に書き込めるようになっていて、みんな勝手に先生にアポイントを入れています(笑)

谷内

あれ、初めて見たときビックリしました!「先生にアポを取るならカレンダーに書くのが一番早い」って。それが許されている環境ということでもあるし、信頼されているということを感じます。

今井

たまに教授のプライベートな予定も書かれていることがあって、見ていいのかな?と思うこともありました。オープンすぎますね!

河合

普段はとてもチャーミングな人ですが、この分野の第一人者として、大学内の研究・教育活動以外にも講演・執筆・動画配信と積極的に活動されていて尊敬しています。医学部で女性で研究者って、色々と注目される存在だと思うのですが、そのプレッシャーを感じさせないバイタリティがあります。

相田

新谷先生が渡米したとき、アメリカではすでに「これからはデータサイエンスの時代だ」と言われていたらしいです。その後どんどん注目が集まり、今では統計学の専門家になるのは狭き門になっているほど。そんなアメリカで長年活動していた先生だからこそ、その知見を日本で活かそうと帰国されたそうです。

加葉田

先生のリーダーシップのおかげで、私たちの連携もバッチリです。「加葉田先生のお昼は週5でカレー」とか「河合先生は家庭菜園が趣味」とか、プライベートも共有しつつ(笑)。この人間関係の良さが、効率のいい仕事にもつながってる気がします。

吉田

医療統計学教室の魅力・強みについて

研究員の種類や人数がこれだけ揃っていることは、私たちの強みです。まだまだ医療統計学に力を入れている大学が少ない中で、当教室の組織力は、全国的にも珍しいと思います。

吉田

REDCapという便利なデータ収集システムを持っていることも特徴です。一般的に、こういうシステムを使うには資金面などのハードルがあるのですが、当教室は設備に恵まれているので、研究者の方が自分でデータセットをつくりあげていくための第一歩につながる、いい環境を提供できると思います。

相田

そもそも営利目的の組織ではないので、費用負担は少ないと思います。初回の相談は無料で、2回目以降に作業が必要になれば契約するのですが、民間企業と比べればかなり格安です。よりよい論文をより多く世に出し、臨床研究を活性化することが目的ですから。

今井

本当に、まだ新参者の僕から見ても、新谷先生の臨床現場を支援したいという強い想いを感じますし、それを全員が一致団結して実現しようという雰囲気を実感します。みんな忙しそうですが、それ以上に使命感や将来への期待を感じます。

河合

現時点ではリソースも限られていますが、今後はより多くの研究者を支援できるように取り組んでいきたいですね。最近では、日本の臨床研究の活性化を目的として、さまざまな取り組みがなされていますし、今後はさらに活性化していくと信じています。

谷内

医療統計学というまだまだ専門家が少ない分野で、チームとして活動できることは非常に心強いですね。大学院にも、医療統計学の専門家を目指す方や、質の高い臨床研究を自身でできるようになりたいと願う研究者など、様々な方が在籍しています。また大学では将来の研究者でもある医学部生に対して、実践的な統計学の講義も提供しています。今後も臨床研究の支援と統計家の育成、両方のテーマを掲げて邁進していきたいと思っています。

加葉田